第1章 右手のみさんが
「っ…」
俺は踵を返して走った。
あいつのいるところへ
そしておばさんのところへ行った
「総悟くん…」
「あいつ…は、腕に何かしてましたか?」
「あぁ、お揃いの…今も納棺師さんに外さないでと頼んで、残してもらってるわよ…」
「…」
それを聞くと俺はあいつのそばへ行く、
そしてあいつの腕についていたそれを見つけた。
死後硬直で動かない腕に顔を近づけ、みさんがを噛みちぎった。
周りの奴らが小さな悲鳴をあげているが関係ない。
死人にこんなことして罰当たりだけど、あいつの祟りなら大歓迎だ。なんて
その後自分のみさんがも噛みちぎり、あいつの顔の横の花をどけてそこに二つ並べた。
あいつの作ってくれたものだから、死ぬまでとっておこうと思っていたんだけど、
俺だけ幸せになるのは許されない、それにあいつには幸せがこずに死んでしまった。
だから向こうで、俺の分のちぎれたみさんがの幸せを味わってほしい。
「ごめんな…俺は…のことがずっと大好きだ」
初めて触れた彼女の頬はあまりに冷たくて、
真っ白な顔にキスを落とすと、同時に大粒の涙が溢れた。
「ずっと、ずっと……っ」
後悔しても遅いのに、後悔してしまう。
こんなにも自分勝手な俺を許してくだせぇ、。
もしもまたどこかで会えたなら、
そのときは俺が、きみに告白するよ。
みさんがの幸せを、今度はちゃんと勝負しよう
きっとまた、
俺はきみに恋に落ちるから。