第3章 夏が始まる
「えと……大輝がね、少しでもヤル気出るようにって手繋いだんだけど……」
緑間「べ、別に手を繋がなくとも、勉強は出来るのだよ!」
緑間は不機嫌そうに眼鏡を直しながら青峰に視線を向ける。
青峰ははぁ、とため息を漏らすと足を投げ出し、拗ねたような顔つきに変わった。
青峰「はぁ……やりたくねー勉強してんだ。ちょっとぐらいイイコトねぇとヤル気も出ねーよ。」
緑間「なっ………!皆、嫌でも頑張ってるのだよ…。」
青峰「まぁ、お前流に言うと、俺にとっちゃコイツと手繋ぐのも人事を尽くしてるっつーことだ。」
ふるふると怒りに震える緑間の手にそっと触れてみると、びくり、と緑間が反応した。
見開いた目で私を見ながら、緑間は固まった。
「真くん、私は大輝が頑張れるなら手繋ぐくらい大丈夫だよ?…それに、本当に集中の度合いが全然違うんだよ?」
次の瞬間真っ赤に染まる緑間の顔。
緑間(___///!?!?手、手、手が…………ふ、触れてるのだよ////!!!お、俺の心臓がおかしなことになってるのだよ!?)
ばくばくと騒がしい音をたて脈を打つ心臓のあたりを掴みながら、緑間はふーふーと深呼吸をする。
そんな様子を見ていた虹村は盛大にため息をつくと、私の肩へと手を伸ばした。
虹村「…だったら、反対の手は俺に寄越せ。青峰に数学教え終わったら、緑間が教えんだろ?そん時は、俺に英語教えてくれよ。」
青峰/緑間「……なっ!?」
「……うん。いいよ?」
虹村の提案をあっさりと受け入れる私に、青峰と緑間は唖然とした。
青峰(なっ!?あっさり受け入れてっしーーー?!くそ……虹村さんめ……結構ガツガツくんな……)
緑間(構わないのか!?……何故だ!?もしかして、これは言った奴が得をする状況なのか……!?だとすれば……くそっ完全に出遅れているのだよ……!!)
思いは違えど二人とも同様に苦い顔をしていたが、私はそんな二人に気づかぬまま、虹村に笑顔を向けていた。
虹村は満足げにエレナと視線を合わせ、その後苦い顔のままの二人へと視線を送る。
その口許には勝者の笑みを張り付けて。
虹村「フッ………」ドヤ
青峰/緑間「………くっ………」
この瞬間、青峰と緑間は敗者の烙印が押されたような感覚を覚えたのだった。