第2章 出会い
「真くんっお疲れ様!」
後ろから現れた緑間に笑いかけると、ふい、と顔を背けられてしまう。
「あ、ごめんね!ドリンク取ってくるから待ってて?……あっくん、足、楽になったなら良かったよ!」
そう言いパタパタと走り去っていく私の後ろ姿を二人は黙って見つめていた。
紫原「ちょっとこれはびっくりだよ~。かるーくテーピングしただけなのに。……エレナちん、顔だけじゃないんだぁ」
その言葉に緑間はぴくりと反応する。
緑間「…俺も初めはそう思っていた。……だが、さすがは赤司の認めた女だ。それだけではないのだよ。…俺のこの指も彼女が巻いたのだが、物凄くしっくりくるのだよ。」
緑間は指を見つめると、指先を少し動かして見せた。
紫原は、はーっと息を吐くと再び遠くの彼女を見つめた。
紫原(ん~…みどちんの話聞いたら、胸のところ?モヤモヤすんだよねぇ。エレナちんがそーゆーのやるの俺だけでいいじゃん、って感じだし)
見つめる先の彼女は次々と部員たちに捕まり、その度に笑顔を向けていた。
紫原(やだなーあれ……俺だけのモノだったらいーのに。)
緑間(どうすれば……あの笑顔を独占できるのだよ……)
同時に焦がした二人の心は、ドリンクを手に再び駆け戻る私を見て、ドキリと跳ね上がっていた。
「遅くなっちゃったね!はい、真くんっ」
笑顔で渡されるドリンクとタオルを受け取りながら、緑間は経験したことのない自分の感情と向き合っていた。
緑間「……ありがとう///」
緑間は自分に向けて笑いかける彼女を愛しく思った。
しかし、彼女に触れようと伸ばす手は赤司の声によって阻まれてしまう。
赤司「… エレナ。紫原の足、見てあげたのかい?」
無情にも緑間と紫原の目の前の彼女は、赤司の声によって笑顔も視線も奪われてしまった。
「征くんっお疲れ様です!…うん、少しテーピングさせてもらったよ。」
赤司はふわりと微笑むと私の頭をポンポンと優しく撫でる。
それに答えるように私も微笑む。
赤司のその行為すら目の前の二人にとっては羨ましくて仕方がなかった。