第2章 出会い
赤司「エレナっ!」
帝光中の前でタクシーから降りると、すぐに名前を呼ばれた。
声のする方を振り返ると、練習着に着替えた赤司がいた。
赤司「タクシーで来たのは、賢明な判断だったよ。…さ、あまり時間がないんだ。行こう…。」
赤司は柔らかく微笑むと私の手を握り、体育館へと足を運ぶ。
帝光中の男子バスケ部は100人以上の部員がいる超強豪校なので、使う体育館も1軍2軍などそれぞれで異なっていた。
いつか、2軍や3軍の人たちも観てみたいけど、まずは征くんのいる1軍だよね!
ドキドキするな……
赤司「着いたよ?…ここが俺たち一軍の使う第一体育館だ。」
手を引かれ入ったそこはキラキラと輝いているように見えた。
選手が走り、バッシュが床を蹴る音。
飛び交うかけ声。
皆、中学生とは思えないほど、しっかりとした体型で筋肉の付き方のバランスも取れていた。
まだ一部の(おそらく1年生)選手は体型が出来上がってないが、一見するだけでポテンシャルの高さは一目瞭然だった。
すごい……
何て人たちの集まりなの……?!
興奮し、私は思わず身震いした。
夢中になって観ていると耳元で赤司の声がした。
赤司「…さすがだね。もう、彼らの能力に気がついた?」
ハッとし、赤司の方を向くと彼は微笑んだ。
「ごめんなさいっ!……つい"癖"で……///」
赤司はクスリ、と笑うと、私の頭を撫でた。
赤司「いや、いいんだ。…後で、君の見解を教えてくれ。………だが、その前にやることがあるだろう?」
そう言うと赤司は私から離れ、コーチらしき人とその横にいる黒髪の男の子に話しかけた。
すぐに赤司は私を手招きし、体育館の中へと呼び込んだ。
__体育館へ足を踏み込む。
その瞬間、私の胸はドキリと跳ねる。
この時すでに私の運命の歯車は動き始めていた。
ここでの時間は後の私の人生にとって、最も楽しく幸せな記憶となるが、それは虚構に過ぎなかった。
しかしまだ、この時の私はそんなことに気付くわけもなく………
ただただ、キラキラした世界へと足を踏み込んだ、それだけだと思い込んでいた。