第3章 夏が始まる
いよいよ始まった全中予選_____
赤司の話していた通り、赤司ら1年を中心に組まれたスタメンたちは初戦を危なげなく勝ち上がり、2勝目、3勝目と勝ち進み、本戦への出場切符を手にしたのだった。
私はというと、試合中はベンチに入ることができないため、観客席での応援だったが、コートに入る帝光の選手たち皆がこちらに拳を向け、"頑張ってくるよ"と伝えてくれたことが本当に嬉しかった。
その分私も精一杯応援し、ハーフタイムには控え室に行きマッサージやドリンク、タオル配りに励んだ。
着々と勝ち進んでいく帝光。
中でも赤司ら一年と虹村、高城の活躍は著しく、殆んどの試合をトリプルスコアで下していった。
_____そして、迎える決勝戦では、虹村、高城の2、3年生らに負け時劣らずの活躍を見せる赤司、緑間、紫原、青峰の4人は、幾度となく会場を沸かせていた。
(やっぱり………あの4人と高城さんは元々の素材が違うな………)
高城は赤司らが入部するまでの2年間、帝光が"最強"と謳われた代名詞とも、呼べる"天才プレイヤー"だった。
誰も彼を止めることのできる人はおらず、最強の名をほしいままにしていたが、赤司ら1年の高すぎる素質に今となっては話題はそちらへと移行してしまっている。
ただ、高城という男は、俗世の評価をあまり気にするタイプではなく、単純に赤司らが実力をつけてきていることに先輩として喜びを感じているだけであった。
そんな高城の性格のお陰もあり、部活内の雰囲気は赤司らを遠ざけることなく、受け入れている。
桃井いわく
「類さんは器が大きい男だから」
だそうだ。
そして彼女は今日もそんな高城に絶好調にメロメロ中である。
優勝を決めた最後の一打は、青峰によるダンクシュートで、終了を告げるホイッスルの音とともに見せた彼の笑顔は最高に輝いていた。
「エレナーーーーーーっ!」
コートの中から聞こえる声。
涙で揺らぐ視線の先に弾けるような笑顔で拳を向ける青峰。
「おめでとうーーっ!カッコよかったよー!!!」
同じように拳を向け、叫ぶと青峰の周りに寄ってきた赤司らもこちらに拳を向けてくれた。
光輝くコートの中、笑顔を見せる彼らはまさに英雄だった。