第3章 夏が始まる
買い出しを済ませ、体育館に戻ると虹村たち2、3年の部員たちがちらほらと軽いウォーミングアップをしていた。
「皆さんっお疲れさまですっ!」
笑顔で声をかけると、皆一様に清々しい笑顔を返してくれる。
「___エレナっ!」
虹村が手を挙げながらこちらに走り寄ってくるが、その顔はテストの重圧から開放感からか晴れ晴れとしていて、私は思わずクスリ、と笑ってしまった。
「あ?何、笑ってんだよ。」
「……ごめんごめんっ!テスト終わってよかったなぁって顔に書いてあったから、つい、ね?」
首を傾げ見上げると、虹村の頬に赤みが指した気がした。
「そりゃそーだろーよ。本当テスト期間ってやたらと長く感じんだよなぁ。……あ、お陰さまで、英語はバッチリだったわ。」
「お力になれて何よりです♪……でも、頑張ったのは修くん自身だもんね。偉い偉い。」
頭を撫でようとすると、その手を掴まれてしまい、私の体はそのまま彼の腕の中へと収まってしまう。
___刹那、ぎゅうと抱き締められたと思ったらすぐに離れる体。
「……頭撫でられるよか、こっちのがいい。」
そう呟いた顔は耳まで真っ赤で、つられて私もほほを染めていた。
抱き締められることには慣れてるはずなのに、最近、皆に抱き締められてる時、いつもと違う感覚を覚えていて。
私の中で少しずつ何かが変わってるのかなって、漠然と考えたりすることがあるが、今だ明確な答えは導き出せずにいる。
「あっ!エレナ~~♡♡♡」
後方から聞こえた桃井の声にハッとし、振り返るとぞろぞろと集まりだした部員たちの姿。
「さつきっ!また、今日からよろしくね?」
「うんっうんっ!こちらこそ♪じゃ、さっそくやりますかねーっ」
桃井とともに準備を始めると、赤司らもいつのまにか来ていたようで、目が合うと優しく微笑み頷いてくれた。
いよいよ始まる全中への道。
指導者も今日からは監督へと変わり、練習メニューも一段とハードになっていく。
そんな中に自分も一緒にいられることが嬉しくて、がむしゃらに自分のやれることをやっていくんだって心に誓う。
気持ちの面だけでも、部員たちとともに並走できるように。