第3章 夏が始まる
学期試験も今日で最終日_____
心配だった青峰もどうにか手応えらしきものを掴みながら頑張っているようで、私は胸を撫で下ろしていた。
___勉強会をやった後もわからないことがあると、度々家に来ては真面目に勉強し、夕飯を食べ帰っていく青峰のことを伝えると、桃井は大きな瞳を見開き驚いていた。
桃井「あ、あの、青峰くんが…!?!?信じらんない…!!エレナ何か魔法でもかけたの!?」
信じられない、と連呼する姿に、普段の青峰の体たらくっぷりが想像できた私は苦笑いをしてしまった。
しかし、今日まで頑張ってきたのも事実。
今度青峰の好きなものを作ってご馳走してあげよう、と考え、思わず笑顔になる。
そして、11日に亘った試験期間が終了する今日の午後からバスケ部の練習は再開される。
ここからは猛スピードで全中に向けハードな練習を積み上げていく形になるわけで。
私は部員達の力になれるよう影ながら精一杯自分のやれることをやっていこう、と心に誓った。
そんな中、今私が何をしているかというと、町にある大型スポーツ用品店にて部活で使用する備品の買出し中である。
粉末タイプのスポーツドリンクやアイシング用のジェルバンドなど、買い物メモ片手に物色していたところ____
?「______エレナ……?」
自分の名前が聞こえ、振り向くと少し離れたところに立ち尽くす一人の男の子。
その彼の後ろには仲間であろう男子3人が驚いたような表情で彼と私を見ていた。
長身で離れていても判るがっしりとした筋肉質な身体。
短い茶色の髪に、意思の強そうな太目の眉毛と、その下にある優しい瞳____
私の脳裏に浮かぶ一人の少年の姿と重なる
「……鉄っちゃん?」
呆然としたまま口から零れた言葉に、彼は大きく頷き、相手を安心させてしまうような優しい笑顔を向けてくれた。
そしてそのまま私の方へと歩み寄りすぐ近くまで来ると、さらに笑顔を深め、両手を広げた。
木吉「エレナっ!マジでお前なんだな!!…ひさしぶり!」
見た目は私が知っていた時より随分しっかりしているが、その優しい笑顔は以前と変わらない_____そう、あの日の”木吉鉄平”そのものだった。