第13章 枷 元就 ★
「それにしても古い建物だな、人住んでんのかァ?」
「知るか」
ドア付近にあるイスに腰掛けた男たちはきょろきょろと周りを見渡している。その様子をは陰から伺っていた。
戦国時代より前に備わっているこの戦闘技術をもってすれば、男の一人や二人、簡単に殺すことだってできる。実際何度もこの屋敷を乗っ取りに来ようとした奴らを殺め、証拠隠滅としてこの屋敷の地下牢に死体を運び、燃やしているのだ。
「…そういや、この屋敷には変な噂があってだな」
「なんだ突然」
「近づいたり、入ったりしちまった奴は殺されて食われちまうっていう話が」
「下らぬ」
そのうわさを流したのは本人だった。
無駄に敷地内に入ってほしくはなかったし、何よりこの屋敷に誰かが手を付けるなど考えたくもなかったからだ。この場所こそ彼女の居場所、奪われてしまえばもうどうすればいいかなんてわかるはずもない。
「それよりあとどれ程でこの雨はやむのだ」
「さてな…」
と、強気な男はポケットから何かを取り出す。
それは人工的な光を発していて、なんだか眩しい気がした。
「…ッ!!」
そこで彼女はようやく気が付いた。
あの男たちは、昔、顔を合わせたことがあるではないかと。他人の空似と言ってしまえばおしまいなのだが、どうしてもあの昔であった彼らと重ねてしまう。
人口的に作られた光を受け、照らされている2人の顔は間違いなく、長曾我部元親と、毛利元就の横顔だったのだ。
突然すぎる再開に、は晴れた心を抑えきれずに階段を駆け下りようとした。
と、そこで足が止まる。
ここで2人に近づき、正体を明かしたところで信じてもらえるのだろうかと急に不安になった。確かにはなのだが、覚えているはずがないのだ。
元就と別れてから、もう何百年と経ってしまっているのだから。