第20章 臆病な 政宗
気が付いたら俺の腕の中には倒れこむようにしていた。
あぁ、無意識のうちに腕を引っ張って、後ろから抱きしめたんだな。
「まさ、」
「怒んねぇっつったろ」
寒いこの季節に人肌が恋しくなるのは仕方のない事だ。
だが、俺はそんな不安定な感情に揺らいでるわけじゃない。ちゃんと、昔から、の事だけを一番にしてきた。人肌が恋しいなんて言葉じゃ片付けさせない。
「…変な事、いっちゃったね」
「変じゃねぇよ」
「政宗…ッ」
俺の腕を掴んで震えだした。きっと、不安なんだろうな。
今、コイツを抱きしめられるのも、不安な気持ちから救い出せるのも…俺しか、いねぇ。
「なぁ、もうそろそろいいんじゃねぇか」
「…なにが?」
「わかってんだろ」
…そうだった、俺達はわかっていたんだ。
分かっていたうえでお互いを突き放して歩み寄ろうとしなかった。この何の変哲もない違和感のかけらもない距離を常に保っていて暮らしていた。
俺は…俺達は、前からもう好きあっていたんだった。
「ごめ、政宗…迷惑ばっか」
「俺の方こそ」
近すぎて見えなかった、見ようとしなかった。目をそらしていた。
この気持ちが叶おうが叶わなかろうが、瞬間的に今までの暮らしが変わってしまう。
もうこうして話す事が出来ないという可能性さえ俺達は不安に思っていた。
でも、それは間違いだったらしい。
「…好きだよ、政宗、大好き…!」
「…俺も、ずっと前から好きだ」
話す事が出来ないなんてありえない。俺達は今迄にもいろいろな困難を二人で乗り越えて来た。
共に歩くことができないなんて無理だ。二人そろって初めて足となって歩くことができるから。
もう互いの気持ちを隠すのは、やめだ。
END