第13章 枷 元就 ★
後日、安芸国の国人領主の娘と政略結婚を行った。
「これで、安心…」
は出席せず、いつもと同じように空を眺めていた。
良く晴れた空、雲一つない真っ青なそれに輝く太陽は映えるものだった。
「こんな所にいたのか」
ふと振り向くと、元就が面倒くさそうに腕を組んで立っていた。服装は式のまま、まるで逃げ出してしまった嫁を追ってきたような姿だ。
「儀に参加せずにこんな所にいるとはな」
「申し訳、ありません」
悲しくなどなかった。好いたものと結ばれないという話は彼女にとっては当たり前のようなもので涙するほど悲しいなど、そんな感情はほとんどなかった。
だが今回、不思議と喪失感が彼女の中では渦巻いていた。
まだ手が届く場所に彼がいるのに、もう届かないような気がしている。失う事になれていた彼女はこの気持ちに戸惑っているのだ。
「…これから、どうするのだ」
「元就様と出会う前にいた屋敷に籠ります」
元就と出会う前、彼女は何百年と同じ屋敷に住み続けていたのだ。
変わることのないその屋敷の姿。それは何度も何度も新しい主や夫、友に立て直してきてもらっていた。ので、彼女は大切なものを失うと決まってそこにこもりきりとなる。
「またあの屋敷か」
「酷く、落ち着くのです」
産み落としてくれた母の腕の中のようで。
そう言えば、もう喋ることはなくなったのか城の方へと帰って行った。
いつもならその背中が見えなくなってから城に戻るのだが、今回ばかりはそうではなかった。
見えなくなってから深く頭を下げ、礼を言い、あの屋敷へと戻って行った。