第13章 枷 元就 ★
「粗方昔の事でも思い出しておったのだろう?」
「よく、おわかりで」
元就とは小さなころからの付き合いだった。と言っても小さいのは元就だけ、の姿は20前後で変わらず美しいまま。
元服後姿かたちを変えずに会いに来るを気に入り、家臣として今元就の城に住んでいるのだ。
「次は九州へ行く」
「心得ました」
死を知らぬ身としてはよく戦場にいた。腕を切り落とされようが、腹部を殴りつけられようが弱りもしない彼女を恐れ敵は引いていくことが多かった。
何度も毛利軍から引き抜こうとして来る軍もあったが、決しては元就の傍を離れようとしなかった。天下など望まない、平和な中国を目指すその姿に惚れたのだ。
だがそれこそ叶っても続く恋などではない。元就は強い戦国武将とはいえ人間だ。いつか死ぬ瞬間はおとずれる、だからはその実り続ける恋心をもぎ取って捨ててしまおうと、この空を見に来る。
「…何故、いるのでしょう」
「何を申すか」
ふと、は気になりだした。
「添い遂げることも死ぬこともかなわぬこの身体。呪われたものを宿しながら何故存在し続けるのか…私にはわからなくて」
「不安か」
「…そうなのかもしれません」
元就はそう聞いてから城に戻っていく。
その後ろ姿を見て、またすぐにこれを見れなくなってしまうのかと考えた。
「怖いなぁ…」
己の指を食いちぎり、その辺に吐き捨てた。
「何度も見れるのは、死人の生きた顔ではなく、蘇るからだ…か」
すぐに指は再生し、血も止まった。