第13章 枷 元就 ★
「また…ッ」
彼女は失うのが得意だった。
彼女の周りには何一つとしてとどまることなく通り過ぎていくのだ。
いや、言い方が違うのかもしれない。
彼女は止まったまま動かないのだ。
「もう、何年になるんだろう」
こうして同じような空を見上げるのは何回目なのだろうか。両手両足の指でも足りないくらい、全人類の手を借りても全く足りないくらい見上げている。
冗談ではない、本当なのだ。
「…何百年なんだろう」
彼女の体は普通ではない。
「駄目だなぁ…」
何度抓って、斬って、失くしても元通りになってしまう。
そう、彼女は不死身なのだ。
故に誰も彼女の傍に居続けられない。
「」
そんな彼女は何度目になるのかわからない名前を付けてもらった。
「はい」
今回は、前回は何十年も前だ、もうとうの昔に忘れてしまった。
「何をしておる」
「…空を、眺めていました」
「またか」
後ろから同じように空を見上げるのはの現在の主、毛利元就だった。