第12章 頑張り屋 幸村
「…某は、嫌な思いなどせぬ」
今度は俺の番だというように、幸村も話し始めた。は涙をぬぐうのに必死で、口を挟もうともしなかった。
「某、いや、俺は、殿の役に立ちたいと思っている」
「…?」
「皆の嫌う仕事を引き受け、無理矢理笑顔を作っているように見える殿の顔を見るのがつらい。嫌な仕事を引き受けるより、辛く、悲しいし、嫌なのだ」
ありえない、そう言いたげな顔で振り返る。
それを見て首を横に振る。
「気が付いておらんのか、ふとした表情はとても泣きたそうな、酷く辛そうに見えるのだ」
「そ、んな」
「俺だけではない、きっと皆思っておることだ」
溜息も多いんだ、と指摘されればは申し訳なさそうな顔をした。
「ごめ、」
「謝るな、其方は悪くなどない、寧ろ俺が謝らねばならぬ」
頭を下げた。
「やめてよ、真田君何にもしてないよ」
「何もしてないからこそだ。同じ学級委員にも拘らず力を合わせることも、支えることもできていない。これでは学級委員失格だ」
そんなことない、そう言ってやりたかった。
だが、何故か行き成り体が拘束され、うまく身動きもとれなかった。
「俺は…ッ、辛いのだ…!」
顔の左側から声が聞こえ、やっとそこで気が付く。あぁ、抱きしめられているんだなぁと。
恥ずかしいという感情よりも、こんなことをさせて申し訳ないとまた涙が溢れて来た。