第12章 頑張り屋 幸村
「あ、来た。お疲れ様」
「う、うむ…」
いざとなってしまえばどう話を始めていいのか分からなくなってしまい、本を閉じながらイヤホンを外して鞄の中に入れるの様子を見ていた。
するとふと立ち上がり、幸村の目の前に立つ。
「話って何?相談?」
まぁ座ろうと幸村を近くの席に座らせる。
「…どうしたの?先輩との事、とか」
「殿の事だ」
幸村はを見つめ、そう言い放った。
は驚いたような顔をして、今までに見たことがない程の焦りを突然見せ始めた。
「え、わ、私なんかしたっけ、ごめんっなんか、ごめんね?」
「殿は何もしておらぬ!!」
謝り続けるを黙らせて、反動をつけて勢いよく立ち上がった。それを目線で追うは必然的に見上げるような形になる。
幸村は拳を震わせ、俯き、何かをブツブツ言っているようだった。
「な…なに?」
「…何故、なのだ」
「え?」
「何故そうも責任を全て負おうとするのだ」
何を言い始めたかと思えば、そんなことか、とは苦笑いをする。
「癖だよ」
「癖?」
「人の顔色をうかがうのは癖、人の機嫌を取ろうとするのも癖」
も立ち上がり頭を下げた。