第12章 頑張り屋 幸村
生徒の大半が下校をし、夕日が照らし始めた頃。
サッカー部がひと段落し一人教室で待つの元へ幸村は向かっていた。
「旦那、どうしたのさ」
その隣には幼馴染である佐助がいた。
「女子と2人っきりなんて…珍しいってか初めてじゃない?」
何を言ってもしゃべろうとしない幸村を、ため息を零しながら見つめる。
「佐助、用がないなら先に帰っていてくれぬか?」
「…まぁいいけど、なにがあったの」
突然立ち止まった幸村の肩にぶつかりながらそう問うが、何も言おうとしない。
佐助もあきらめたのか、鞄を持ち直してかた肩を叩いた。
「何話そうとしてるか知らないけど、キツく言うのは駄目だよ」
「…わかっておる」
幸村を背に昇降口の方へ向かう佐助。
そうだ、と思い出したように振り返る。
「あ、でさ、誰に何の話をしようとしてるの?」
「同じクラスの殿に、大切な話をだ」
「えっ何々、告白?!」
「ちっ違う!!!」
顔を真っ赤にして反応する様子を見て、そうなの、と笑いながら答える。
「……なんというか、注意というか、」
「旦那がお説教、ね…」
珍しい事もあるもんだ、と笑いながらその場を去る。
幸村自身もこんなことは初めてだと思っていた。同い年の女に説教、ましてや二人きりで話をするなどと。
ドアが閉まっている教室の前に立ち、深呼吸をして開けた。