第12章 頑張り屋 幸村
「真田ァっ!!」
校庭から声が聞こえ、幸村は身を乗り出す。
「はい!!」
「ちょっと練習付き合ってくれよ!」
「えっ、い、今ですか!」
どうやら幸村の腕を見込んでの話だったらしい。
そりゃ幼い頃からボールと触れ合い、様々なジュニア大会にも出ているのだから、態々遠くから強いチームを引っ張ってきて練習相手をしてもらうよりもお手頃でやりやすいということなのだろう。
「行ってきなよ」
は手を止め、窓から顔をのぞかせている幸村に声をかけた。
「先輩呼んでるよ?」
「だが…」
「こんな仕事ちゃっちゃと終わるからさ、相手になってあげなよー」
ね?と問いかければ首をぶんぶん横に振る。
「いつも殿にお任せしてしまうっ」
「気にしてないよ?こういう仕事好きだし」
「だが某は」
「真田ーっ?」
ほら、と窓の方を指させば、深く深く頭を下げて教室をかけて出て行った。
それを確認し、足音が聞こえなくなってから再びホチキスでプリントを止め始める。幸村がやったプリント冊子は少し汚くて、とてもじゃないが生徒に配れるものじゃないと判断し、もう一度止めなおすことにした。