第2章 懐妊 三成
そして夫の帰宅時間。
「帰ったぞ」
「おかえりなさい」
「…元気がないな、何かあったか?」
「ううん、なんでもない」
ならいい、といつものようにネクタイを緩めながら自室に行った。
検査薬はゴミ箱に捨ててある。今日は話せない、まだ早いとは確証を得てから話す事にした。
「そうだ、」
「ん?」
「明日、休みになった。どこか行くか」
「うんっ何処に行こうか!」
珍しく夫の仕事に休みができた。
この人は仕事に穴をあけるのが大嫌いで、何があろうとも休む事は絶対にしない人だ。なのでこういう誘いはとてもうれしかった。
「…あ、水族館に行こう!新しくできた所のチラシが入ってて」
「なら朝早く行こう。どうせ混んでいるだろう?」
そうだね、と10時を過ぎた時計を見ながら食器の片づけをする。
早く起きなければならないなと夫は寝室にこもる。
「…言えないよねー」
食器を洗いながらため息をつく。ごみ箱に押し込んだ検査薬を拾い上げて苦笑いを零した。
もし喜んでくれなかったらどうしようと不安で不安で仕方がなかった。