第11章 嘘つき 家康
「実はいつかは伝えなければと思っていたんだ」
「な、なに?」
突然真面目な声色になり、は飲み干したコップを置いて家康に向き直る。
「実は、」
まさか、まさかね、とは火照る顔を落ち着けようと必死だった。
両思いなんじゃ、そう思っていたので、次の言葉には耳を疑った。
「…嫌い、なんだ」
「……は?」
「の事が嫌いだ」
一瞬と言えるのだろうか。時が止まった気がした、というより心臓や脳、全身で働く細胞までが凍り付いたような気がした。
家康は俯き、弁解をしようともしなかった。どうやら聞き間違いではないらしいという事だけしかの脳は処理しきれなかった。
「と、突然、どうしたの」
震える声で家康を直視せずに聞く。
「…前から思っていた、伝えようと、」
「わざわざ、そんなことしなくても」
嫌いならばこんな家に連れてきて言うなど、鬼畜の極みだ。何のいじめなのだろうか。
「嫌いなのに、一緒に遊んでくれたりしてたんだ」
「…?」
は耐えきれずカバンを持ち、その場を立つ。
「無理して話さなくてもいいのにッ!」
最後のあがきとして、思い切りカバンで家康を叩いた。
そこで家康は不思議そうな顔をしてを見上げる。その顔にまで苛立ちを覚え廊下をドタドタと歩き、サンダルを履いてドアを開け放った。
「今までごめん、無理させて」
扉を閉めた。