第11章 嘘つき 家康
「ま、待てッ待ってくれ!!」
踵の高いサンダルで勢いよく階段を下るを家康は裸足で追う。
声をかけても立ち止まることのない彼女を見て、相当怒っている、いや、悲しんでいると家康は感じた。
「!」
「何ッすんの?!」
早歩きで帰っていく後ろ姿をすぐに走って追い、腕を思い切り掴む。
だがは悲しそうな顔で、怒りに満ちた声色で家康の手を振り切ろうとなんども試みる。が、男女の力の差だ。無理に決まっている。
「嫌いなら追いかけて来なくていいでしょ、嫌がらせのつもり?!最低!」
「話を聞いてくれ、ワシは」
「言い訳?今更?笑わせないで」
から表情が消え、見下すように家康を鼻で笑う。
一体どうして家康がこんなことをするのかワケがわからなかった。まさか直接好きな人の口からお前が嫌いだと聞く事があるだなんて微塵にも思っていなかったのだ。
それに嫌いだと言われてなお、帰ろうとするを引き留めている。もっと文句を叩きつけてやりたいという家康の意図なのではないだろうかとは勝手に思い込み、今目の前にいる家康を殴ってしまおうかとまで考えた。
「…メール、見てないのか」
「……見たからここに来たんだけど」
「最後まで、見てないのか?」
家康のその不安げな声に、は惑わされそうになった。
これも家康の策なのかもしれない、最後にとんでもない事を言いたいのかもしれない。そうなのではないかと家康を睨み付ける。
「とにかく今、見てくれ。最後に送ったメールだ」
そう言われ、仕方なくカバンの中から携帯を取り出す。
慣れた手つきでメールBOXを開き、最後に送られてきた家康からのメールを何度も何度も見直す。だ、内容が最後まで変わることはなかった。