第11章 嘘つき 家康
予定通り駅前に到着した。
きょろきょろしていればまわりにはリア充があふれかえっていることがわかる。
なんせここは休日になれば人通りが多くなる駅。近くになにがあるというわけではないが、ここには様々な交通手段があるため、人が自然と集まるのだ。
バスだって散り散りにどこかへ行くし、タクシーを待つ広場もとても広い。電車もラインの種類が豊富で学生も集まりやすい。
なのでこのリア充地獄に巻き込まれるのは当然の事だった。
「…てか、遅くない…?」
携帯の時計を見ればもう待ち合わせ時間より20分が過ぎていたのだ。
いくら日差しを避けている日陰だとしても、ここまで長時間外にいると汗は滲み出てくるし、首にはぬぐいきれなかった汗がたれている。
こんなみっともない姿は恥ずかしくて見せられないと慌ててタオルでふくものの、それも追いつくことなく流れていく。
「あつ、…暑い」
暑苦しいリア充、上がる一方の気温、汗と共に流れ落ちた日焼け止め。もうこの暑さをしのぐには家に帰るしか方法が思いつかなかった。
もう帰ろうと決意し、無一度汗をぬぐって日陰から出た時、
「あっ!」
「?!」
此方に向かって手を振る家康がいた。
「こんな所にいたのかっ気が付かなかった…」
「え、い、いや…うん、ごめんね?」
家康はタンクトップ姿で、汗を青春っぽくきらめかせていた。
「いつもと違う服装だったし…化粧をしてたせいか?気が付かなかった」
「え、うそ、わかった?」
「あぁ!」
雰囲気が違う、と家康は嬉しそうに言う。
そのせいで見つけられるのが遅かったのかとは少しだけ後悔したが、似合っていると言われてからはそんな後悔など消え失せていた。