第10章 お腹が痛い 慶次
「ちゃん、そのままでいいから聞いててくれよ」
どうやら出て行ったのは慶次ではなく先生だったようだ。
は返事もしないまま布団の中で目を閉じた。
「俺さ、毎月苦しんでたちゃん見てたんだ」
ドSかコイツ、と内心イライラしただったが、口出しをせずにおとなしく目を閉じたまま話を聞いた。
「スゲェ辛そうなのに誰にも言わなくて、ずっと我慢しててさ、友達に話しかけられたら無理矢理笑顔作って…不安、でさ」
慶次の声色が突然明るみを失くし、沈んだ声になってしまった。
「そのうち、壊れちゃうんじゃないかって…」
「…私には私のやりかたがあるんだよ」
布団をかぶったまんま、シーツと掛け布団を両方握りしめて言った。
「心配してくれる人を突き放すのは勇気がいるし、こんな腹痛なんて誰に訴えてもわかるわけないし。」
「…そういうもんなのかな」
「じゃあどういうもんなの?」
また痛みが戻ってきて、イライラしながら慶次に問う。
この痛みだって慶次にわかるはずもない、とは布団をかぶり、唇をかむ。
「友達ってのはさ、迷惑かけてかけられて、それでお互いを信用していくもんじゃないのかい?」
「…知らないよ」
「俺だってその一人さ、ちゃんのいう迷惑だったら俺はかけてほしい」
「そう」
「っていうか保健室に連れ添うくらい迷惑じゃねぇって」
慶次にとってはそれくらい、と思うかもしれないがにとっては重大な事だった。
今迄にもあったのだ。自分は迷惑ではないと思って頼ったら後日迷惑をかけていたなんてことが。
それが無性に怖かった。