第10章 お腹が痛い 慶次
「ま、前田君」
「慶次でいいってー、で?お昼は食べられそう?」
「…いらないや、なんかお腹すいてないし」
「そっか」
慶次は自分の弁当を先生が使うデスクの上に広げて食べ始めた。
あと少しで授業が始まるというのに、まだ食べてなかったのかとはその食べている様子を眺めていた。
「あれ、そういえば…えっと、慶次君て、友達と食べてたよね、今日はいいの?」
「あー…うん、まぁいいんだって」
そう言って慶次はもくもくと弁当を食べ進める。
はおとなしくベッドに戻り、布団をかぶった。もう生ぬるくなってしまったペットボトルは脇の棚に置いた。
すると向こうでごちそうさま、と小さく聞こえてカーテンがあいた。
「…俺もここにいていい?」
「授業は?」
「俺はいてもいなくても聞いてないし」
へら、と笑う慶次。
はお好きなように、と言って布団を頭まで被った。
「そういえばさ、ちゃんは好きな人いるの?」
「…慶次君が期待するような恋バナはないよ」
「そうじゃなくて!…好きなヤツいるのかなぁって」
には好きな人はいなかった。そういった恋愛沙汰になると疎いほうだし、付き合って下さいと告白されたことはあったが何処にですかと真顔で返してしまったこともあった。
友達の恋愛相談にはのれるが、自分の事となるとさっぱりなのだ。
「…いない、かな」
「そうなんだ」
心なしか残念そうに聞こえたその声は、おやすみ、という言葉以降発さなくなってしまった。