第10章 お腹が痛い 慶次
授業の終了を知らせるチャイムがなり、先生が教室から出て行った。
「は、あー、いてててて…」
やっと声を出すことができて腹を先程よりも深く抱える。
「ちょ、顔色よくないけど」
慶次は授業が終わってからいつもなら廊下に出て友達と話に行くのに、今日に限って教室から出て行くようなことはなかった。
「大丈夫だから」
話しかけないで、というようにはスマホを取り出してイヤホンを耳にはめた。
流れる音楽は殆ど頭に入って来ることはなく腹痛と格闘するにはなめらかすぎるBGMだった。
ふと顔を上げると目の前に慶次がいた。
「わっ」
「保健室行こうぜ?」
「や、やだ、どうせすぐに」
「さっきも言ってただろ?それ」
「そう、だけどー…」
万が一、チャイムがなってから教室に戻ることを考えている。
保健室ってのは本当に具合の悪い人が来るわけだし、ツキイチに必ず来るこんな痛みで保健室のベッドを一つ奪う訳にはいかなかった。
それを慶次は察したのか深い溜息を吐いた。
「はー、ちゃんの具合の悪さは尋常じゃねぇって」
「だ、だけど」
「いいから、俺が次の…あぁ、現代文な、担当の先生に言っといてやるから」
目で行きな、といっているのがにはわかった。
「…よろしく」
よたよたとしながら教室を出て一人で保健室へ向かうことにした。
誰かを連れて行って授業に遅らせるようなことがあれば、謝っても謝り切れないからだ。