第8章 とけた 小十郎
「何処か行きたいところはねぇか?」
「…わからない」
「なら外に出るか」
歩き方も忘れたはずなのに、足は勝手に前の方に踏み出す。
小十郎はの手を取り、その白い空間から連れ出した。
「外、青い、綺麗、においがする…」
「綺麗だろ?あんな部屋よりは楽しいはずだ」
隣で笑う小十郎はの頭を優しく撫でた。
「小十郎さん、私、どんな子?」
「どんな子ってのは」
「昨日の話、何をしていたの?」
毎日記憶が消えているのだから、昨日はどんな人だったのかと気になる。
すると小十郎は少し考えるそぶりを見せてから話し始めた。
「同じだ」
「え?」
「昨日も俺に同じことを言ってた」
「同じ…」
はそれを聞いて少しムッとした。
「同じ何て嫌、違う事をしたい」
「それも言ってたな」
「も、もう…」
クスクスと笑う小十郎。
はその笑顔を見てなんとなく穏やかな気持ちになった。