第6章 戦う人 幸村
大坂の陣が静まり、奥州の地には身を寄せて安全な日々を過ごしていた。
「伊達様、お茶が入りました」
「Thank you」
政宗の側近としてよく働き、数週間もかからぬうちにすっかり伊達軍に馴染むようになった。
「…Ah、?」
「はい」
「…何も、聞かねぇんだな」
政宗の言いたいことはよくわかっている。
きっと幸村についての事だろう、とは寂しげに笑んだ。
「……幸村様は、私に追いつくとおっしゃっておりました。いつか、いらっしゃるでしょう」
「そう、か」
政宗は微笑み返すとまた執務に取り掛かり始める。
頭を下げ、政宗の執務室を後にする。
「幸村様、いつ…来て下さるのでしょうか」
あの最後に見た笑顔が脳裏にちらつき、目を閉じても、気分転換に遠乗りに行っても、将棋を打っても、本を読んでも、何にも集中できなかった。
「…そうだ、」
よく、幼い頃、佐助に追いかけられながら幸村と遊んだ原っぱを思い出した。
確かあそこは戦場となり、もう燃やし尽くされてるとは思うが、今一度だけあそこの空気を吸いたいと願った。
政宗にそう言えば気を付けろよ、と言って送り出してくれた。
礼をいい、馬を借りて、あの場所へ駆けだす。