第5章 表情 小太郎
「…小太郎が、私を大切に、」
大切にされている、といえば聞こえはいいだろうが行動が制限されてしまっていると言った方が正しいだろう。
危険な事をしようとすれば無言で止めてくれるが、クラスの友達(異性)と遊ぼうとするだけで静止されてしまうのだ。
その為放課後に遊ぶには小太郎の監視のもとだし、怪しい行動があった場合は強制的に家に連れ戻されてしまう。
「…」
なんとなく足を運んだ先は沢山の思い出がある公園だった。
「変わってないなぁ…」
幼い頃はよくここで小太郎とおいかけっこをしたり、御飯事に付き合ってもらったり、と倒しい思い出がたくさん詰まっているところ。
「……」
「わっ」
突然風が吹くと、目の前には小太郎が立っていた。
「…何しに来たの?」
そう問うが小太郎は何も言わずにを見つめているだけで何もしゃべろうとしない。
それにますますいらだちを募らせたは歯ぎしりをして拳を小太郎にたたきつけた。
「何?!なんのようなの?!」
「…っ」
「喋れないくせに、笑えないくせに、無表情のくせに、親みたいに私の事しばりつけて!!」
小太郎は殴られた頬を撫で、少し俯く様に顔をひいた。
「…小太郎は私の保護者なんでしょ?一生そうして生きていくわけ?馬鹿じゃん」
何を言ってもこの言葉が届くわけがない。
何を言っても返してくれるわけがない。
何を言っても伝わるわけがない。
小太郎には感情がないんだから。
そう思えば思うほどもどかしくて、腹立たしくて、何もできない自分が醜くて、涙が溢れだしていた。