第5章 表情 小太郎
そっと、頬に暖かな感触が残った。
視線を上げてみれば小太郎がの涙をぬぐっていたのだ。
「っ触んないでッ!何にも、わかんないっくせに…ッ!」
言ってはダメだ、小太郎を否定してしまう、そう思っていても言葉はぼろぼろでてくる。
「どうせ、なんにも喋れないならッ!!」
小太郎の首を掴み、ぐっと力を入れる
「いなくなっちまえ…!」
は小太郎の首を両手で思い切り締め上げた。
なのに、小太郎は殆ど動じなかった。
「なんでよっなんで、なんで、あんた、なんなのっ?!
苦しむ表情も浮かばず、はその場に座り込んでしまった。
小太郎の首からするりと手が抜け落ち、砂がじゃり、と音を立てた。
「変だよ、喋れないの?喋りたくないの?なんなの、なんだってのッ」
「…」
小太郎はが座り込んだ目の前に、膝をついて座った。
「…こ、こた…ろ…!」
本当にわずかだったが、笑った…ような気がした。
「顔、笑ってる、…っ」
涙を流しながら、小太郎に縋り付きように抱き付いた。
小太郎は思ったより細かった。
「笑えるじゃん、変なの、おかしいよ…は、あははっ」
もっといろんなカオが見たい、小太郎の感情を見てみたい
こうして僅かな変化でも感じ取れるなら、近くにいるのも悪くないとはまた無表情に戻ってしまった小太郎の顔を撫でながら思う。
「もっと、顔見せてよ、馬鹿小太郎」
「… 」
「っ、そういうの、もっと早く言いなって…」
小太郎の言葉は、息だった。
END