第3章 ついてくる 佐助 ★
「さ、すけぇッ」
ぶわっと涙が溢れてもう目の前が見えなくなった。男も、街灯の明かりも、ぼやっとしてどうにでもなれって思ったとき。
男の手が止まった。
「…っ」
思い切り男を突き飛ばして脱がされかけていたTシャツを着なおしながら家へと走って行った。
後ろからあの変な男が駆け寄ってきたらどうしようかと思っていたけど、おってくる様子もなくて無事に家に行き着いた。
「佐助っ佐助ッ!」
自室に転がり込んですぐにこの混みあがる嘔吐感をどうにか紛らわして、安心感に浸りたかった。
「ねぇ、佐助、あのっ」
『ちゃん?えっ?どうしたの?』
「いま、私っ変な、人に」
『…変な人?』
私は正直に不審者に遭遇して何があったのかを話した。
佐助は静かにうん、うん、と私を落ち着かせてくれるような声で話を聞いてくれた。
「も、怖かった…っ」
『……じゃあ明日からはバイト帰りも送っていくよ』
「い、いいよっ!店長に話してあがる時間はやめてもらうし…」
『俺様がといたいだけだから、ね?』
そう言われてしまえば断れないってのを佐助は分かったうえでそういってる。絶対。ズルイ。
「…わ、わかった」
『安心して寝な?』
「ありがと、おやすみ…」
通話をきり、ベッドに寝っ転がった。
さっきの不審者のことはもう忘れよう。もう会わない、佐助と帰るからもう会うわけないし。
被害届とかなんとかの話は焦っていた私の頭からは抜け落ちていた。