第3章 ついてくる 佐助 ★
「ひっ」
直ぐに振り返った。
「誰、ちょっ…!」
腕を行き成り掴まれて、口をふさがれてしまった。まだ佐助に連絡してないのに…!
幸いスマホを持っている左手は掴まれてなくて、画面をどうにかチラ見しながら「たすけて」とだけ文字を打って送信した。
きっと佐助のことだからすぐに来てくれる。そうだ、この目の前の不審者から守ってくれるはず…
「ッ、ん、うぐっ」
腕をひかれ、全くと言っていいほど人目に付くことがない路地裏の方へ連れて来られてしまった。こうなれば声を上げなければ佐助だって気が付いてくれないかもしれない。
その時、目の前の男のズボンのポケットの中に入っていた携帯のバイブレーション音がきこえた。
これで怯んでくれれば…って思った私が馬鹿だった。気を緩めてしまったのは私だ。
「?!」
私の首を舌が這う、そんな感覚がした。こんな経験は初めて、気持ちが悪い、でもなんでか力が入らなくて、逃げようにも逃げられない。
「ちょ、まっ」
何を思ったか男は私のTシャツをめくり、下着を露出させた。私には露出趣味なんて全くないし、ただ恥ずかしいだけだったから必死にその男の腕を掴んで抵抗した。
「う、そ」
力が入らなかった。
もともと力はないほうだとは思ってたけど、同じ年齢の男子をひっぱたいてひるませることくらいはできたのに、今はその時の光景が嘘だとでも言うくらい腕や手、足にも力が入らなくなってる。
これはきっと心が恐怖で侵食されてるからだろうなって、なぜかとても客観的に事態を把握した。
もしかしたらここで辱めを受けるのかもしれないって、それもしょうがないかなって、私の警戒心が緩んじゃったのが悪かったんだなって…。