第3章 ついてくる 佐助 ★
それからほとんど毎日私の家の最寄り駅周辺で不審者が目撃されるようになったらしい。
まだ私は見てないけど20代前半の若い男で、いつも暗闇に紛れるようにそこに突っ立ってるって目撃者は言ってる。
早く捕まえればいいのにって思うけど、どうも追いかけるとすぐにどこかに行っちゃって誰も顔をはっきり見てないらしい。
「まだ捕まらないのかな…怖いなぁ」
今日のバイトは夜の10時頃に終わって現在最寄り駅近辺を家に向かって歩いている途中。
真っ暗で街灯も少ないから、イヤホンをしながら歩くなんて不審者を寄せ付けてしまうから今は注意を払って歩いてる。
「やだなー…怖いなー…」
いつも歩いてる道がいつもと違うように見えてしまって、家まで結構近いほうの家だとは思っているけど少し裏手の方にまわらないといけない道を通るから遠く感じる。
少し小走りでいると後ろから気配を感じた。
「…?!」
振り向かなかなくても分かる。あぁ、きっと不審者だって。
私は私だとばれないようにあの岡崎さんが狙われた日からバイトで遅くなるときは深くフードをかぶって帰るようにしてる。
「…ッ」
急に走って相手を刺激してもだめだと思ったから大人しく普通に歩くペースにまで速さを緩める。
それと同時に後ろにいる気配もゆっくりとした足音になった。
やばい、これは本物かもしれない。こんなのドラマでしか見たことないし、そのドラマだって全部狙われていた人は後ろから刺殺されていたりするんだもん。
どうしよう、どうしよう、と思っているうちに私の家の近くまで来てしまった。ここで家にすぐ入るべきか、それとも誰かに連絡するべきか。
あぁそうだ、佐助に連絡しよう。それまで家の近くをうろうろしてればいいんだ。
そう思って私は後ろの気配を気にしながらこの辺の地形を思い出して家の周辺を歩き回ることにした。変に家を特定されるのは怖いし、佐助だったら私が走るより早くここについて助けてくれるはずだって思った。
その時、後ろの気配が私の真後ろにまで迫る。