第17章 怖い、恐い 政宗 ★
落ち着いた頃、政宗は変わらない顔で私の頭を優しく撫でていた。
「...一つ、聞いていいか」
「うん」
「...避妊は、してたんだろうな」
その時ハッとした。私が急いで家に帰ったとき、太腿に伝う嫌な感じがあったのだ。あれは、まさか...
「わからない、最初は、してたはず」
「明日、病院いくぞ」
万が一のためにと政宗はすぐに婦人科に電話をしてくれた。
もしこれで妊娠していたらどうしようか。おろすべきなんだろうが、中絶は危険を伴うと聞いたことがある。二度と妊娠が出来なくなるかもしれないと。
「...本当に、ごめんなさい」
「やめろ、が悪いわけじゃねぇから」
「初めて、だったのに」
政宗も私も、黙ってしまった。
きっとお互いに大切だったという一つの理由はそこにあったんだと思う。
そこだけではないだろうが、それに価値があるのは十分に理解していた。
なのにそれを、私は顔も知らない男に捧げてしまったのだ。
「もう忘れな」
「...無理だよ」
「....sorry」
明日、妊娠だと言われてしまったらどうしようか。
もうそんなことで頭が一杯だった。怖かった。
「嫌だよ...政宗ッ....!!」
抱きつけば、抱きつき返してくれる。
こんなことになるのなら、政宗に抱かれていれば良かったかもしれないと心底後悔した。
「も、ねる」
「俺はlivingで寝るから、bed使いな」
掛け布団をリビングに運んでいく政宗の背をじっと見ていた。いつもなら一緒に寝ると言って聞かないのに。
「...怖いだろ」
悲しそうな笑顔で私を見ていた。
...あぁ、気を使わせているのか。
「寝て、欲しい」
「大丈夫なのか?」
「....変な夢見そうで」
恐怖でしかなかった一日を、幸せな気持ちで終わらせたかった。
「お願い」
「....おう」