第17章 怖い、恐い 政宗 ★
「帰り、ね」
「あぁ」
私は思い出しながら順序良く説明する。
「学校出て坂を下ってたの。私近道知ってるから今日はそっちを通ろうと思って」
「あの裏道入ったのか」
「...うん」
「まどろっこしいのは好きじゃねぇ、ハッキリ言えよ。何処までヤられた?」
悪気がないのは知っている。でもいきなり過ぎて私は眉間にしわを寄せてしまった。
すると政宗はため息をついた。
「誰に、なんて聞いても思い出せねぇだろ?だから、何をされたかって聞いてんだ」
「それ、は」
こわい、話したくない。でも話さなければ離れていってしまう気がして、でも話しても距離を置かれる気がして。
怖くて怖くてたまらなかった。
「...俺は何があってもアンタを嫌う自信はねぇよ」
だから、と私の頭を抱きかかえて子供をあやすように甘やかしてくれる。
話しても、いいんだろうか。
「......壊れちゃったよ」
「Ah?」
「政宗には、触れられないの」
そういうと、なにか分かったのか息を呑むような音が頭上から聞こえた。
「まさか」
「ごめん、なさい」
その言葉と同時に涙が滝のように溢れ出してきた。
悔しかった
怖かった
痛かった
嫌だった
消えたい
死んでしまいたい
そんな気持ちが心の器にどぼどぼと注ぎ込まれているようで、そんなに一気に処理できないわたしの心の器はどんどん涙として体の外へ出していく。
「嫌だ、嫌だよ、なんでっ...なんで私なの....!?なんでよぉっねぇ!!」
「おい、落ち着けって」
「私は変わらず生きてるのにッ!なんでよ政宗!!なんで私なの!?私以外にもいたじゃない!!!ねぇっ!!!」
「ッ!!」
大きな声が私の脳を劈き、なんとか意識を取り戻せた。私は、何を言っているんだろう。