第17章 怖い、恐い 政宗 ★
「おいしかった!ご馳走様です」
「......」
いつもならそうか、とか、おう、とか言ってくれるのに、何も言ってくれなかった。やはり私が隠していることに気が付いているのだろうか。
「なぁ、なんか困ってねぇか?」
眉間にシワよってるぜ、とデコピンをされる。そんなに酷いか、とむっとしてみるとからりと笑われた。
「話してみな、なんとかしてやる」
「...大丈夫だよ、大したことじゃないし」
嘘だよ、大したことだよ。
そう言いたいけどその一言で離れてしまうんだ。きっと。
「俺に話せないことか?」
「.......ごめん」
話せないことだよ、話したらいなくなっちゃうでしょ?
そう言いたい。でも、嫌われたくない。
「俺にはどうにか出来ねぇのか?」
「...うん」
嘘だよ、どうにかして欲しいんです。きっと政宗なら、私の不安で揺らいでしまった心をとどめてくれると信じてる。
でもその反面、怖くて話せないと臆病になっている私もいる。
「話を聞くくらいなら、俺にもできるだろ」
正直、とても嬉しかった。ここまで私の悩みを聞いてくれようとする人なんて家族でもいなかった。
だからもう話して楽になりたいなって...そう思った。
「...脱げ」
「え?」
「脱げっつってんだ」
何を、と笑って誤魔化そうとしたけれど、何故かいつもの様に笑顔が出せなかった。
冗談に聞こえなくて、さっきの場面が頭の中でリピートされて、だらしなくにやけた男の顔とか、体中に絡み付いた気持ち悪い液体とか、すべてが頭の中で渦巻いた。