第17章 怖い、恐い 政宗 ★
よろよろと、なんとかたどり着いた政宗の家は一人暮らしなんだそうで。
親馬鹿な家庭から抜け出したくておじいちゃんに頼んでお金を出してもらい、マンションの一室を買ったんだと言う。流石、ボンボン。
完全オートロック式のマンションのロビーにはシャンデリアが光り輝いていて、ソファもふわふわ。少し薄暗いのがまるでマンションではないみたい。
「あの、です」
政宗の部屋番号を入力してボタンを押すと、政宗の声が聞こえて大きなガラスの自動ドアが開く。
ここを潜るのはいつも緊張してしまって、一度足を止めてしまうんだけど、今回ばかりは何故かすぐに会いたくて小走りに潜った。
ドアの目の前にたち、インターフォンを押そうとすると私の気配を察したのかドアが勢い良く開いた。
「遅かったじゃねぇか」
「...ごめんね」
頭を撫でてくれるその手を私は直ぐにとって抱き着きたかった。でも、それが出来ない。
「晩御飯はまだだろ?できてるから」
「ありがと」
私の荷物を持ってくれて中に入れてくれる。本当にイイ人だと思う。
それなのに、私は...
「?」
「えっ、ご、ごめん」
考え事をして立ち止まっていたようで、私はぼうっと靴も脱がずに玄関で立ち止まっていた。
「...なんかあったろ」
「なんにもないよ?」
もう隠さなきゃならない気がした。
隠さなきゃ、政宗が今以上に遠い存在になってしまう。