第14章 謝り癖 政宗
「先週の金曜日、雨の中での出来事でした!」
「…は?」
何を話し始めるのかと思えば、まるでこれから紙芝居でも始まろうかという入りで話し始めた。
「私はいつものようにっ帰り、その、あの大雨の中偶然伊達さんを見つけたのでつい後ろからつけてしまいました!」
大胆にも軽いストーカー発言をしたのだが、当人政宗は殆ど気にしていない。それよりも先週の金曜日、己が何をしたのかを必死に思い出していた。
「細い路地裏に入った伊達さんが自分の傘を雨宿りしていた子供に渡していました!それに加え、タオルまで貸されていました!」
あぁ、とようやく思い出す。
先週の金曜日、それはとてもひどい大雨だった。もうまるで傘も役に立たず、地面から跳ね返った泥水が制服の裾に付くほどだ。
政宗はいつもお坊ちゃまらしく車で送り迎えをしてもらっているので、まぁ雨などはほとんど関係ない。
だが先週の金曜日は違った。
いつものように車に乗り込み、いつものように帰宅していると車の窓から一人の男の子が路地裏へ駆けこんでいく様子が見えた。この土砂降りの中、傘さえささずにだ。
気になった政宗が車を止めるように言い、己の傘とタオルを片手に車を飛び出し、その男の子が入って行った路地裏へ向かった。
案の定男の子はびしょ濡れで、小学生なのだろう。ランドセルの水を払っていた。
政宗は持ってきたタオルと傘を男の子に渡して頭を少し撫で、そのまま車へ戻って行った。
「…あれか」
「は、はいっ」
どうやらはそんな彼を見て、人想いで、心の優しい人なのだと感じたらしい。
まさかあの光景を誰かに見られていたとは、と思った政宗は異様に恥ずかしくなってきてしまい、つい俯いてしまった。