第13章 枷 元就 ★
「…枷が、屋敷と…?」
「大切な者がいなくなるたび、この屋敷に戻ると言っておったな」
「覚えて、おいでで…?!」
もう生まれ変わる前のハズなのに、元就はまるでその時にいたかのように言葉を並べる。実際にはいたのだろうが、まさかちゃんと覚えているとは、驚きが隠せなかった。
「一度でもこの屋敷を壊したことはあるか」
「…ありません」
「それは何故だ」
「わかりません、ただ、夢に顔も知らぬ母が出てきて壊すなと…っ」
そう考えれば枷が屋敷という事についてはもう明確だった。
屋敷はなんどもリフォームを繰り返してきたが、一度基盤事すべて壊したことはなかったのだ。
新しくするについても必ず一角は残されて修理されてきたし、増築を繰り返して大きくなっても基盤は昔のままだったりしていたのだ。
初めて建て替えようと行動した時は、もう顔も思い出せない生みの親(だと思われる女性)が夢の中に出てきて必死に止めるのだ。
壊してはいけない、と。
「でも私はっ」
「今度こそ死ぬときは共にいるぞ」
「元就様ッ…!!」
屋敷を壊せば、一気には衰えて死ぬかもしれない、だがその恐怖さえ拭うのは元就の見たこともないような笑顔だった。
何をたくらんでいるわけでもない、純粋な笑顔だった。
「言えずに、すまなかった」
「…?」
「…ずっと、愛しておる」
たどたどしい言葉にはとげも何もなかった。