第13章 枷 元就 ★
後日、海岸沿いにあった古い屋敷はとある会社によって取り壊された。
その時誰もが祟りを恐れたものの誰一人死ぬこともなく、怪我もなくすんだという。
「ったく、手がかかる連中だよなァ」
「貴様に言われたくなどないわ」
まっさらになってしまった土地を踏み、3人は海を眺めた。
「ここには何かたてるのか?」
「…両親のお墓を」
もう骨もない、名前もわからない、そんな両親だったが今まで墓を建ててあげて事はなかった。
きっともう1000年位さまよわせているのだろう。
「……名前、思い出せなくて」
「名前など必要ない、思いがあればそれで良かろう」
「毛利にしてはいいこと言うじゃねぇか!!」
「煩い!」
元就と元親は相も変わらず口げんかを繰り広げている。
は一人、考えていた。
この枷が取れた今、一番の問題は死についてだった。
今迄そんな事は考えたことがなくて、腕をかみちぎろうが火の中に飛び込もうが、傷はすぐに塞がってしまい、死への恐怖などほとんどなかったのだ。
だが今は違う。先程も試したのだが、一度ガラス片を踏んだ。血が止まらず、自分でも驚くほどの激痛が走ったのだ。すぐに元就が応急処置をしてくれたのだが。
「死が怖いか」
隣で元親との口喧嘩を終えた元就は涼しい顔で言った。
「恐れるものではない、受け入れるのだ。どうせまた来世でも顔を合わすのだから」
さも当たり前だと、そんなふうに言われてしまったらそれが普通なのかと思ってしまう。
だからは今まで通り、死については考えないことにした。
「年をとり、時間が過ぎ、失くなってしまうなんて…」
「なくなる時も逝く時も傍にいてやろう」
「…ふふ、心強いです」
もう、一人ではないのだ。
END