第13章 枷 元就 ★
「元就様ッ!」
「ノックくらいせぬか」
元就は本を読んでいた。その姿が執務室にいたあの頃と重なって見える。
「は、はっ…」
「…座れ」
溢れ出そうになる涙をこらえて、元就の近くにある椅子に腰かけた。
彼は静かに本を閉じ、に向き直る。
「」
「…はいっ」
「待たせてすまなかった」
発せられる言葉と同時に、の目からは大量の涙があふれ出た。
もう一度この声を聞けるだなんて、まさかそんな、と。まだ信じられていないのだ。
「申し訳っ、ござ、」
「良い」
短い言葉なのに、とても温かい、安心する言葉だった。にはこれで十分過ぎるほどの言葉だった。
「は、ずっと、ずっと、元就、様をっ」
「…迎えに来てやったのだ」
「は、…っ?」
ぎゅっと抱きしめられ、言葉が出ない。
「ここが貴様の居場所なのは重々承知の上で話をしておる。それでも我は出てきてほしいと思っている」
「な、ぜ」
「、貴様の枷はこの屋敷ぞ」
元就の顔が近い、そう判断した時にはゆっくりと離れて行くときだった。
唇にぬくもりを感じると、突然顔に熱が集中して見せないように俯く。