第13章 枷 元就 ★
は荒れ狂う海に身を投じ、まだ流されていなかった貝類や魚を取ってきていた。
寒さは感じない。波にもまれ岩に頭を打ち付けてもすぐに傷はふさがった。
「ただいま戻りました」
屋敷に入り、そう言葉を漏らすと心配そうに元親が駆け寄ってきた。
「おいおい…濡れてんじゃねぇかっ何処行ってたんだよ!」
「ちょっと、そこまで」
「にしては長すぎんだろ、風呂とかあるんだろ?」
入れ、と促されれば入らないわけにもいかず、おとなしく入る。
あたたかな湯気は不安な心を溶かすように包み込んでくれた。押しつぶされそうになった時の風呂ほど落ち着く場所はなかった。
「怖い、また失うなんて…」
どうせなら死んでしまいたい。
そう思って風呂に顔をつける。溺死してしまいたい、そう思っても何故か水中でも酸素が取り込めてしまう。もう死ぬすべはないのだ。
「温まったか?」
「は、はい」
元親は彼女の部屋で待っていた。
「…アンタ、毛利の事知ってるんだろ?」
「ぞ…存じ上げません」
「誤魔化すなよ、俺は…アイツも分かってんだ。かつて愛した不死身の女ってのはな」
突き刺さる言葉、不死身。
そう、死ぬことが許されないこの身体では誰も愛せなかった。愛すことも許されなかった。置いて逝かれてしまう恐怖を、枷を、ずっと背負い続けているのだ。
「元就はな、アンタをまだ好いてる」
「そ、んな」
「嘘だと思うなら部屋に行ってみな」
俺は此処で待っててやるから、
その言葉が原動力になり、は部屋から飛び出して元就がいるであろう部屋へと走って行った。