第13章 枷 元就 ★
「ここがお2人の寝室です」
「すっげぇ!豪華だな!」
「こやつと同じ部屋だと…?」
元親は大喜びでベッドに飛びつき、元就はイライラした様子で中へ入り、窓から外を眺めた。
「止まぬな」
「…雲が厚く、切れ間がありませんので今晩は止まないかと」
ふむ、と頷いて元就はもう一つ、離れた所にあるベッドに腰掛けた。
どうやら腹ごしらえは済ませているようで腹が減ったと訴えてくるようなことはなかった。だがここには食料がない。きっと朝になれば腹を空かせてしまうだろう。
「私は少し、外を見てきますので屋敷の留守を頼んでもよろしいでしょうか」
「はァ?この大雨の中何処行くってんだよ」
「余計な者が立ち入っていないか確認してくるのです」
毎晩それは行っているのだ。
闇に身を沈めるのは得意であり、人見つからないようにどこかへ行くというのは日常茶飯事だった。
「よかろう」
元就はそう言って、ベッドに寝転がった。
この態度、は微笑ましくも思っていた。まさかまた、記憶がなくとも主のこの態度が見れるなんて、と。
「行ってまいります。」
そう告げて部屋を出て扉を閉める。
閉めた瞬間、悲しさと嬉しさと、なんだかむずむずするような心でいっぱいになり、すぐに階段を下りて屋敷を飛び出し、思い切り閉めた。
「ッ、はぁ、あ、…う、あっ」
抑えきれない感情で胸がつまり、いつの間にか腕の肉を噛んでいた。
人と変わらぬはずの赤い血がしたたり落ち、下に点をいくつも描いている。
「元就様ッ、元就様元就様元就様元就様…あ、うぅっ…」
何度も名前を唱え、自分の心を落ち着けようとするが、名前を呼んだところでこの暖かくなってしまった心を冷たくするのは無理だった。