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月が綺麗ですね【鬼灯の冷徹*BL】

第1章 月見夜の灯火


「あんまり遅いから、せっかく作ったおつまみが冷めちゃったじゃんか。」

そう言ってやつが指さすのは、
とても美味しそうな唐揚げだった。


「月見に唐揚げですか。」

「お前がリクエストしたんじゃん」

「まあ、そうですが。」

持っていたススキを柔らかい地面に深々と挿す。
すると、まるで最初からそこに生えていたかのように生き生きとそれらは風に靡いた。


「へえ。綺麗だね、それ。」

「ええ。つい持ってきてしまいました。
………そういう貴方も、綺麗なものをお持ちですね。」

奴が持っていたのは、
真っ赤な色の鮮やかな紅葉が咲き誇る木の枝だった。


「うん。なんかムード出るかなって思って。

……さ、早く乾杯しようよ。
僕もう待ちくたびれちゃったんだからさぁ」

「そうですね。酒はたくさんあるんでしょうね?」

「勿論。あ、そうだ。これ、お前に効くかと思ってさ、買ってみた。」


ぽん、と軽く投げられた手のひら大の瓶には、“鬼ころし”と書かれていた。
現世のコンビニなんかでも売っている
有名な酒である。


私はその場に胡座で座ると、瓶をあけて一気飲みしてみせた。


最後の一滴まで飲み干すと、
ふうっと息を吐いて奴を睨みつけた。

「こんなもん、効く訳がないでしょう?

ご馳走様です」

「凄いねぇ。よくもまあ躊躇いもせず一気飲みできるよねぇ。」

「そりゃあまぁ、前に視察の時に好奇心で飲んだことがありますからね。
それに、一人ひとりが作った特殊な酒ならいざ知らず、
大量生産されているものが私に効く訳がない。」


「強気だねえ。じゃ、これは?」


そう言って差し出されたのは、
月光に照らされ淡く輝く酒だった。

「────これは?」

「僕の作った酒。美味しいよ」

純粋に笑う目の前の白服に、
私は嘲るように鼻で笑ってみせた

「これがホントの豚汁」

「僕は豚じゃない!!」

「おや、では牛汁ですか?まずそう」

「おま、こういう時くらい減らず口叩くのやめろよ…………」

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