第6章 雲にかくれた月。
行為を終えたあと、
火神は乙女のように布団に包まって
顔を真っ赤にしていた。
そして、ひたすら私に謝っていた。
「…本当にわりぃ…。俺…最低だな…。」
「もぉー…誘ったの私からだし…。謝らないでよー。」
私は火神を励ますように
ヘラヘラと笑う。
火神が私をぎゅっと抱きしめる。
「あ、あのさ。俺、お前にはっきり言っておきたい事があったんだ。」
「ん?」
月明かりに照らされて火神の顔がはっきりと
見える。
火神は真っ直ぐに私を見つめた。
「順序は逆になっちまったけど…俺さ、本当にお前の事が好きなんだ。その…今まではっきりさせてなかったけど…付き合って欲しいんだ。」
火神ははっきりとそう伝えると、
再び顔を真っ赤にした。
嬉しくなり、
思わず笑みがこぼれる。
…
でも、本当にそれでいいのだろうか?
私はもうすぐこの世からいなくなる。
辛い思いをするのは私じゃない。
残された火神だ。
私は何も言えず
ずっと黙り込む。
「鈴音…?」
火神が心配そうに私を覗き込む。
ズンっとした痛みが
下腹部を襲う。
「…うぅ。火神、お腹痛い…。」
私がそういうと、
火神は慌てて立ち上がり電気をつけた。
暗かった部屋が明るくなり、
シーツについている血が目に入る。
私は青ざめた。