第4章 空を彩る花。
「火神くん見てたら…あんたのお父さん思い出しちゃった。」
お母さんは突然そんな事を言い出した。
「…お父さん?」
母の口からお父さんの話しが出るのは
めずらしかった。
私の父は私が小さい頃に亡くなった。
私と同じ病気だったそうだ。
この病気の原因は遺伝…なんだそうだ。
「お父さんね、私のお腹にあなたの命が宿った時、すごく悩んでたの。僕と同じ病気の子が生まれたら、きっとその子は悲しい人生になるって…。」
「だから、君のためにも子供のためにも…生まない方がいいんじゃないかって言い出したの。…バカでしょ?」
お母さんは涙を流しながら
静かに笑った。
「だから、私は何が何でも生む!って言ったの。そしたらねぇ。お父さん涙を流して喜んだの。」
お母さんは懐かしそうに
溜息をついた。
「本当は生んでほしかったのよ。それでね。ずーっとお腹ごしにあんたに話しかけてたのよ。出産の時もソワソワしちゃってさぁ…。」
「死ぬ最後の最後まで…あんたと私の事心配してた。」
お母さんは私の頭をやさしく撫でた。
「ねぇ、鈴音。少しの間でもいいから…お母さんもお父さんもあんたに幸せになってほしい。」
「…ありがとう。」
私がそういうと、
お母さんは強く私を抱きしめた。
「そうと決まれば…ほら!早く体調良くして、学校行って、火神くんに会ってお礼言いなさいっ!」
「…うん。」
それから私は2週間ほど入院をした。
でも、丁度夏休みに突入してしまい、
結局火神と学校で会える事はなかった。