第1章 はじまりのお話。
「よし、じゃぁ…早速学校探さないとね…!お母さんちょっと行って来る!」
そういうと、お母さんは荷物をまとめ始めた。
「あ、お母さん!」
私が呼び止めると、
お母さんは笑顔でこちらを見た。
「ありがとう。」
私がそういうと、
お母さんの目からはまた涙がこぼれた。
「何言ってんの!お母さんなんだから当然でしょ!」
そう言いながら、
お母さんはせかせかと荷物をまとめると、
病室の出口へ向かった。
「じゃぁ、また明日ね?」
振り返らず、振るえた声でお母さんは言った。
「うん。また明日ね。」
そうしてお母さんは病室から出て行った。
薄い病室のドアの向こうからは
母の嗚咽交じりの泣き声が聞こえた。
「…ごめんね…お母さん。」