第1章 はじまりのお話。
私には
"心臓に欠陥"があるそうだ。
私の心臓は生まれた時から
壊れていた。
小さい頃に
呪文のような病名を宣告されてから
入退院の繰り返しだった。
だから、普通の生活に憧れていた。
勉強して、みんなで話して…
放課後には遊んで…
心のどこかでは
それは叶わないんだって
私はわかってた。
でも、
いざ何をしたい?と聞かれると、
浮かぶのはそれだけだった。
「もぉー、謝らないでよ!お母さん!」
私はヘラっと笑うと、
お母さんをぎゅっと抱きしめる。
しばらく泣きじゃくるお母さんの
背中を撫でていると、
落ち着いたのか、
私をゆっくり離すと、お母さんは不器用に笑った。
「お母さん、先生にいろいろ聞いてくるね…。」
「うん。いってらっしゃい。」
お母さんが出て行った病室で
私は一人、砂時計を逆さにする。
サラサラと落ちていく砂を眺めて
小さく溜息をついた。
「あと1年…何しよう…。」