第1章 はじまりのお話。
人生の残り時間はあと何時間であろうか。
そんな事を考えた事はありますか?
私の残り時間は約8760時間。
つまり
あと1年で私の人生は終わる。
それを知らされたのは
つい先日の事だった。
でも、自分が長くない事は
もっと前から知っていた。
だからいざ、伝えられると
胸のつっかえが取れたようで
逆に気持ちがよかった。
「鈴音…何かしたい事はある…?」
泣き腫らした目の母が震えた声で尋ねる。
「私ねぇ…学校に行きたい。」
「…え?」
「普通の生活をしてみたいの。」
私がそう口にすると
母は泣き崩れた。
「ごめんね。ごめんね。鈴音…」
謝らないでよ。
お母さん。
気の利いた事のいえない娘で
ごめんね。
お母さん。