第8章 水玉DAYS
早くあいつに伝えたくて
俺は走った。
優勝伝えたら、
あいつならきっと喜んでくれる。
あいつの好きな
キャラメルと
水玉模様の包装紙に包まれた花を持って
俺は走る。
冬は日が落ちるのが
早くて、既に辺りは暗く静まり返っている。
走ってむかう途中の
灯油ストーブのような匂いが
冬を感じさせる。
白い息が出る中、
俺はあいつに話しかける。
「よぉ。久しぶりだな。今年も優勝したぜWC。」
だが、
返事はなかった。
当然だ。
返事があった方が
俺はびっくりする。
あの日、奇跡は
起こらなかった。