第10章 ◎ 忘れ物
ー 凛 side ー
久しぶりに見た本当のサエ。
はりついたような笑顔じゃなくて、、
言い合いを楽しんでいて、、
1年前のサエだった。
私には引き出せなかった笑顔。
殻にこもっていると、知っていたのに。
向き合えなかった。
はりついたような笑顔でも、サエが
笑ってくれるなら良かったのに...
こんなサエを見ちゃったら、、
もう、、
はりついたような笑顔じゃ嫌だよ..
心から笑ってほしい、、
あの人が誰かは、わからない。
でも... あの人は 、きっと...
サエの事を理解し向き合ったんだろう。
他人に、心配や迷惑を掛けるのが
大嫌いなサエ。
自分の事で、気を遣われるのも
空気を読まれるのも嫌いだと
知っていたのに..
私は 気を遣っていた。
空気を読み、話題を変えていた、、
演技にも気付いていたのに、、
気付かないふりをし続けた。
1年、、
演技しているサエと過ごして居たら
違和感が無くなっていった。
演技する前のサエを忘れかけていた。
ダメだな、これじゃあ..
サエの事 見えてなかったのかな、、