ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第10章 ありきたり風
なるほど、と丸くなってみると、顔だけ出せばとてもいい具合にフィット。
リンはスヤスヤと寝始めた。
「船長のフードの中でリンが寝てる…」
「なんだあれくそ可愛い…‼︎」
「これが…癒し…‼︎」
クルー達はヒソヒソとローとリンの光景に癒されたということを共感していた。
夕食になると、食堂が賑やかになる。
リンはお腹が空いたため、起きてフードの中から飛び降りた。
そこへ、ペンギンがやってくる。
手には何かの料理だろうか、湯気がホワホワと立っている器を持っていた。
ペンギンはローの隣の椅子を引いてリンに手招きをする。ぴょんとペンギンの膝の上に乗れば、先ほど持っていたのは美味しそうなリゾットだった。
リンはよだれを垂らしながらペンギンをガン見する。
「コックに言って特別に作ってもらったんだ」
リゾットをスプーンにすくい上げ、ふーふーとある程度冷ました後、リンの口の前にスプーンを運んでやる。
「熱いから気をつけろよ」
「にゃ」
ペロッとひと舐めして、大丈夫だと確認してはむはむ食べ始めた。
「にゃー」
「美味いか?」
「にゃにゃにゃにゃ!!!」
「わかったわかった」
そわそわとスプーンにすくい上げて運んでくれることを待っていると、パッと目の前の景色が変わった。
「寄越せ、おれがやる」
移動していた先はローの膝の上。
ペンギンが、見本ちゃんと見てましたよね?と言いながらリゾットの器とスプーンをローに渡した。
ローがリゾットをスプーンにすくい上げ、ペンギンと同じようにふーふーと冷ます。
その仕草に胸が高鳴る。
(くそっ…このイケメンめ…‼︎)
リンは心の中で叫んでいた。
スプーンが目の前に運ばれる。
ペロッと確認のひと舐めをした後、はむはむと食べる。
「にゃ」
すぐに食べ終えてしまうと、次をよこせとローの手をツンツンして催促する。
「お前、よく噛めよ?」
「にゃ」
顔に似合わないことを言いながら、またスプーンを運んでくれる。
それを何回か繰り返し、リンは満腹になった。
「にゃーん」
リンは、ペンギンにありがとうと言うようにすりすりと顔を腕に擦り寄せた。
「はいはい。ほら、船長嫉妬してるぞ」