ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第10章 ありきたり風
ローを見れば嫉妬というよりも拗ねた子供のような顔をしていたので、ローの膝に戻ると、抱き上げられて部屋に連れて行かれた。
「にゃ?(どうしたんだ)」
「…お前早く戻れよ」
「にゃ⁈(Σんなむちゃな)」
「猫じゃ駄目だ…」
「…!」
ぎゅっと抱きしめられる。
大きなローの胸の中。
でも、腕を背中に回すことはできない。
抱きしめ返すことはできない。
途端に心臓が締め付けられた。
「にゃ…」
名前を呼ぶことすらできない。
「…おれはどうしちまったんだろうな。お前の顔が見れないだけで、お前の体を抱きしめられないだけで、こんなになるなんて」
すっと離れた時に見えたローの目は悲しさしか無かった。
「に…」
ただ鳴くことしかできないこの体。
(あれ、こんなに辛いものなのか?こんなありきたりな事態になってるのに、何でこんなに寂しいんだ?)
リンは涙が溢れた。
それを、ローは見逃さなかった。
「おい、どうした、大丈夫か?」
「にゃ…にゃ…」
「っ…お前もおれと同じか?」
ローの問いかけに、頷く。
涙は止まらない。
ローはリンを撫でた。
「…お前の泣き顔も見れねぇ…いいもんじゃねぇな、猫化ってやつは」
苦笑しながら言うローの手に顔を擦り寄せる。
ローはリンを持ち上げ、ちゅっと口にキスをした。
その時。
「…あ、れ?」
全裸のリンが、涙を流しながらローに跨っている。
「戻っ…」
「たな。状況は最高だ」
ニヤリと笑ったローの目には、安心の色と優しい色が宿っていた。
のだが。
「しっ尻を撫で回すな‼︎ていうか離せ‼︎服を着させろ‼︎」
全裸なため、何も隠すものもないのでがばっとローに抱きつく形になるが前を隠した。
「お前が大胆なことするから悪い」
「これは不可抗力というやつで」
「どうだ?おれにしっかり抱きつける感触は」
「そ、それはとても良い…じゃなくて早く離せ‼︎撫で回すな尻を!!!!」
「手触りがいいお前の尻が悪い」
「理由が不明だ!!!!」
何はともあれ、なんとキスで戻れたというオチ。
この後、仲良く(意味深)1日の終わりを迎えましたとさ☆